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◆我が国のフグ食の歴史
ふぐ(サバフグの先祖)が地球上に出現したのは、1500〜3500万年前といわれている。 トラフグの出現するようになったのは150〜200万年前といわれている。 |
<約2万年前>
約2万前が今日の新人類の始まりといわれておりますが、そのものの出土品の中に、マフグ科の骨がみられるところから、この頃から我が国のふぐ食の歴史は始まったと思われる。
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<縄文時代>
時代は下り縄文時代(BC5000年〜)になると、釣、網、銛(モリ)を使った漁労が発達し、主なものでは、川魚ではコイ・ウグイ・ウナギ・マスの4種類、海魚ではボラ・エイ類、イワシ類、ニシン・タラ・スズキ・メバル・タイ類、アジ類、ブリ・サバ・マグロ・サワラ・カツオ類、ヒラメ・カレイ・トラフグ・マカジキ類など35種類に達している。
特にタイ・スズキ・フグなどはいずれの貝塚からも発見されることは注目される。
ふぐはその骨格からみて、いずれもマフグ科の30cm以上の大型ふぐで、マフグ科以外のものは見当たらない。 |
<弥生時代>
農耕文化もみられるようになったこの時代におけるふぐの新たな遺物は特に目立ったものは数少ないようである。
農耕文化の発達は、縄文時代人が狩猟と漁労を主としたのに比べると、食糧の確保ははるかに安定し、魚介類に依存する度合いは縄文時代ほどではなくなったのであろう。 |
<大和時代>
古代中国に伝わる『魏志倭人傳』は日本古代史に関する最古の資料であるが、その中の末廬(マツラ)国の項に記されている。
「末廬国に至る。四千余戸有り。山海に浜(ソ)いて居る。草木茂盛し、行くに前人を見ず。魚鰒を捕うを好み、水深浅と無く皆沈没して之を取る」 |
<奈良・平安時代>
日本書紀・延喜式・出雲風土記(ふぐの記録あり)
本草和名(布久の名あり)918
倭名類聚鈔(布久・布久閉の名あり)931〜938 |
<安土桃山時代>
ふぐ食禁止 1592 |
<江戸時代>
ふぐ食禁止の掟(武士) 武将感状記(ふぐ人体実験記録あり)1716
物類呼称(てっぽうの名、記録あり) |
<明治時代以降>
「違警罪即決令」発布 1982(明治15年)
「河豚を食う者は拘留科料に処す」とフグ食禁止
「河豚食の解禁」山口県に限定 1888(明治21年) …超高級料理化する。
大正7年兵庫県が、昭和16年大阪府が河豚食を解禁し一般に食されるようになる。 |
<河豚の高級加工製品の出現>
1955(昭和30年)日常の干物としては古くから、一夜干・味淋干等保存食の一つとして漁師等、庶民の間で食べられていた。
それに工夫を凝らし、丁寧に綺麗に美味しい加工食品を開発したものが出回るようになってきた。当主・松浦龍瑞(現80)が世に送り出した商品もたくさんあります。(焼きふぐ・ふぐ燻製・大漁漬(皮の酢漬け)・ふく雪・ふく氷皮…) |
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◆どうしてふぐは下関?
江戸幕府が食禁止していたふぐ食も幕府の威信が薄れる幕末になると一般化し、広く普及していたものと思われます。明治になるとさらに普及し中毒患者急増。
明治新政府は明治15年「違警罪即決令」を発布。「河豚を食う者は拘留科料に処する」と禁止してしまいました。
そうした中、我国初代総理の伊藤博文公が春帆楼(下関)に泊まった時の事、しけで活魚がなく干物で我慢してもらうよう頼みましたが伊藤公は聞きいれません。
女将はしかたなく打ち首覚悟で1鉢の刺身を出しました。 実にうまい。
後でそれが今は禁断の魚の河豚であると知った伊藤公「こんなうまい肴を食わせない法があるものか」と、当時の山口県令(知事)原保太郎に命じて解禁するにいたりました。
これが明治21年「河豚食解禁」です。
しかし、これは山口県に限ってのことでした。下関の河豚は官政の保護のもと、超高級料理として一部特権階級のものと化してしまいましたが、それまで数軒だった河豚料理屋が十数軒に増え、下関から東京送り(上送り)をする業者も現れました。
ここに近代のふぐ食の歴史が始まり「ふぐは下関」が定着しました。 |
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◆ふぐ?ふく?どっちがホント?
一般的には「ふぐ」と呼ばれています。
下関に限っては縁起を担いで”福”に通じる「ふく」と呼びます。
ふぐは”不具”に通じるとして呼びません。
我が国でふぐが記録としてはっきり記されたのは平安朝中期の頃です。
醍醐天 皇の延喜十八年(918年)に深江輔仁の撰になる、我が国最古の本草書『本草和名』に「O・和名布久」と記されたのがはじめとみられます。
又、承平年間(931〜938年)我が国最古の辞書といわれる源順(ミナモトノ シタゴウ)撰進の『倭名類聚鈔』に出てきます。
<和名フク・「布久・フク」又は「布久閉・フクベ」と云い、之を犯すと怒り、怒れば腹膨れて水に浮き上がる>と言うようなことが書いてあります。
並記してあると言うことは昔からフクとフクベの二通りの呼び方があったとするのが適当で、今日両者が使い分けられても不思議ではありません。
ということで、「ふぐ・ふく」どちらがホントということはありません。
今日、学名では『fugu』がついております。
ちなみに当店は基本的に「ふぐ」と言っています。商品に名前をつける都合により「ふく」「ふぐ」と使い分けております。「河豚」の呼び方には拘っておりません。 |
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◆海にいるのにどうして「河豚」なの?
漢字の生まれた中国では、河にフグがいたからです。和名ではメフグといい、中国では春のご馳走としていたようです。(「◆ふぐの旬の話」を参照)
産卵の頃になると揚子江を始め大陸の河川及び、コレに連なる湖沼にに遡上します。中国ではふぐ類に使う普通名詞に「ふぐ」を使うこともありますが、本来はメフグの固有名詞とみられます。
「河」にいる「豚」のように美味しい魚という説、「河」にいる「豚」の姿に似てる魚という説があります。
「河豚」の文字があらわれたのは中国唐代以降で、本草書にしばしばみられます。
日本では、江戸時代に「河豚」の文字が輸入されました。日本ではふぐは海にいますが、「海豚」という字はすでに「イルカ」とついていたのでそのままの「河豚」にしたのかもしれません。ちなみに、ふぐに関する記述では、2200〜2300年前の「山海経」に出ております。 |
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◆ふぐの旬っていつ?
≪日本の場合≫
ふぐは「秋の彼岸から春の彼岸まで」といわれています。やはり食べる条件として、てっさ・てっちりに欠かせないワケギにポン酢は冬のものですし、熱々のてっちりは寒い冬には売れますが、温かくなるとそうそう食べに来る客があるわけでもありません。したがって、4月にはいると9月まで漁がなかったというのが大体のところではないかとおもいます。
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≪中国では4・5月がふぐの食べ頃≫
中国では4・5月に黄河や揚子江を産卵のために逆河してくる淡水産の「メフグ」を獲っては煮て、羹(あつもの)をつくり、来客のたびにご馳走していたようです。
呉越(日本では大和時代の始め頃・AD300年頃)の時代にもっともふぐ食が盛んだったといわれています。客を招くときにふぐがないのは盛宴とはしなかったようです。 古来中国では 「不吃河豚不知魚味吃了河豚百無味」・・・ 河豚を食べずして魚の味を知ることはできない。河豚の味は他にない、ということです。
ということで、日本では「彼岸から彼岸」、中国では4,5月といわれてきました。が、市場に時々今頃でも水揚げされる「河豚」はとても美味しいです。ただ、とても量が少なく、1尾数万円もすることがありますので、とても我々庶民の口には入りません。沿岸でもいつでも獲れますよねぇ・・・(^^;)危ないので自分での料理はやめましょうね。 |
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◆ふぐがふくれるのはナゼ?
ふぐは食道の一部に特殊な嚢(ふくろ)があり、外敵を威嚇するときに脹れてみせる。また、水底の砂中に棲む貝や沙蚕(ごかい)を得るため嚢に水と砂を吸い込み水鉄砲のように吹きかける。その時、水と砂を呑み込むために脹れるのである。
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◆ふぐは砂ベッドで寝ます
ふぐは(トラフグ・クサフグ・ヒガンフグ等)夜はもちろんのこと、昼間でも遊び疲れたり、病気になったり、敵に襲われたり、環境が悪化すれば目・背面・背鰭を出すだけで砂に潜ってしまいます。砂ベッドから出るときはキョロキョロして、周囲の安全を確かめて出て来るのです。
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ところが、近年、大型底引き船による操業が行われ、海底が荒らされております。稚魚や餌となるものまですべてを取り尽くし、フグだけではなく、他の魚種も影響を受けております。 |
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◆ふぐは目をつぶって寝ます
ほとんどの魚には瞼は有りませんから目をつぶって寝ることはないのですが、ふぐには目の周囲にたるんだ皮があって、カメラのシャッターの絞りの様な形で目を閉じるのです。 |
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◆ふぐ毒「テトロドトキシン(Tetrodotoxin)」
ふぐの学名に使われるテトラオドンTetraodon(4つの歯の意味:ふぐの歯はほとんどが4つ)と、 トキシンToxin(毒素の意)とを一緒にして、「ふぐからとった毒」という意味なのです。
この抽出された毒は無味無臭、無色なので、通俗本や知名人のフグ談義で、肝を食べたらビリビリと舌がしびれたとよく言われますが、
これはふぐ料理を食べる時に入れた「薬味:唐辛子・大根おろし」等のせいであろうと思われます。
河豚中毒の症状は、おう吐を起こす他に呼吸を弱くし血圧をさげてしまいます。これは早めの処置をしないと死につながります。軽い中毒症状の場合、ふらふらとして足を取られたりするので「酔っぱらう」という言い方をします。
いずれにしましても舌が痺れるとかの症状ではありません。ふぐは肝は食べない・自分で釣ったふぐの調理はしないということを守れば大丈夫です。 |
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≪薬としてのテトロドトキシン≫北浜喜一著:「ふぐの博物誌」より |
中国だけではなく、日本でも昔から、ふぐを食べると体が温まる、血行がよくなる、筋肉の効果を柔らげる等といわれている。ふぐのチリなどを食べたあと、何となく気分がさわやかになるのは、わずかながらのテトロドトキシンが刺激を与えるためである。テトロドトキシンを調合した注射液が「テトロドトキシン」「ヘバトキシン」などの名称で販売されている点からも、あながち「フグは万病に効く」との説はウソではないといえよう。
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≪ふぐ毒の強さ≫ |
青酸カリの強さの1000倍
フグ毒は青酸カリの1000倍の威力があり、0.5ミリグラムで大人一人を死にいたらしめる。この毒がフグの体内にどのようにして作られるかは、まだ解明されていない。無卵期、抱卵期、産卵期の季節的変化はもちろん、同一の種類の雄、雌によっても持つ毒量が異なるなどから、解明までにはかなりの時間をようするとみられる。 |
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≪ふぐの種類と毒性≫ |
毒力のMU(マウス)単位は、組織1gが殺しうるマウスのg数を示している。1000単位とは臓器1gがマウス1000gに致死的であることを示している。人に対するフグ毒の最小致死量は、マウス単位で20万マウス単位とした。 |
科目 |
属名 |
種名 |
卵巣 |
精巣 |
肝臓 |
胆嚢 |
皮膚 |
腸 |
筋肉 |
血液 |
文献 |
フグ科 |
トラフグ属 |
クサフグ |
猛 |
弱 |
猛 |
− |
強 |
猛 |
弱 |
− |
2 |
|
|
コモンフグ |
猛 |
強 |
猛 |
− |
強 |
強 |
弱 |
− |
2 |
|
|
ヒガンフグ |
猛 |
強 |
猛 |
猛 |
強 |
強 |
強 |
無 |
2,6 |
|
|
ショウサイフグ |
猛 |
弱 |
猛 |
− |
強 |
強 |
弱 |
− |
2,6 |
|
|
ナシフグ |
猛 |
弱 |
強 |
− |
弱 |
弱 |
弱 |
− |
6 |
|
|
マフグ |
猛 |
無 |
猛 |
− |
強 |
強 |
無 |
− |
2 |
|
|
ムシフグ |
強 |
無 |
強 |
− |
強 |
− |
無 |
− |
2 |
|
|
メフグ |
猛 |
無 |
強 |
− |
強 |
強 |
無 |
− |
2 |
|
|
サンサイフグ |
強 |
無 |
強 |
− |
弱 |
強 |
無 |
− |
2,12 |
|
|
アカメフグ |
強 |
無 |
強 |
− |
強 |
弱 |
無 |
無 |
2 |
|
|
ナメラフグ |
強 |
無 |
弱 |
− |
弱 |
弱 |
無 |
− |
2 |
|
|
★トラフグ |
強 |
無 |
強 |
− |
無 |
弱 |
無 |
− |
2 |
|
|
カラス |
猛 |
− |
猛 |
− |
− |
− |
無 |
− |
6 |
|
|
シマフグ |
強 |
無 |
強 |
− |
無 |
弱 |
無 |
− |
2 |
|
|
ゴマフグ |
猛 |
弱 |
猛 |
強 |
強 |
無 |
弱 |
− |
2,6 |
フグ科 |
モヨウフグ属 |
シロアミフグ |
猛 |
− |
弱 |
弱 |
無 |
無 |
無 |
− |
6 |
フグ科 |
サバフグ属 |
★サバフグ |
無 |
無 |
無 |
無 |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
|
|
ドクサバフグ |
猛 |
強 |
強 |
強 |
強 |
強 |
強 |
− |
12 |
|
|
カナフグ |
無 |
無 |
強 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
フグ科 |
キタマクラ属 |
キタマクラ |
無 |
− |
弱 |
− |
弱 |
弱 |
無 |
− |
2 |
フグ科 |
ヨリトフグ属 |
カワフグ |
無 |
無 |
無 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
ハリセンボン科 |
ハリセンボン属 |
ハリセンボン |
無 |
− |
無 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
|
イシガキフグ属 |
イシガキフグ |
無 |
− |
無 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
ハコフグ科 |
ハコフグ属 |
ハコフグ |
無 |
無 |
無 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
|
ウミスズメ属 |
ウミスズメ |
無 |
無 |
無 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
イトマキフグ科 |
イトマキフグ属 |
イトマキフグ |
無 |
無 |
無 |
− |
無 |
無 |
無 |
− |
2 |
ハゼ科 |
ツムギハゼ属 |
ツムギハゼ |
70MU |
1000 |
内蔵 |
210 |
300 |
無 |
無 |
− |
13 |
/gMU |
gMU/g |
MU/g |
MU/g |
|
猛/ |
10g以下で致死的 |
強/ |
10g以下では致死的ではない。 |
弱/ |
100g以下では致死的ではない |
無/ |
1000g以下では致死的ではない |
−/ |
データなし |
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文献: |
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末広恭雄(1948) フグ即の生理作用について。水産学会報、10(1,2)、1-5
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|
成田弘子(1988) 軟体、棘皮動物におけるふぐ毒の分布。橋本周久編、フグ毒研究の最新の進歩。水産学シリーズ70、45-52、恒星社厚生閣、東京、117pp。
|
|
Noguchi,T.,H.Kao and Y.Hashimoto,(1971):Toxicity of the goby,Gobius criniger.Bull.Japan.Soc.Sci.Fish., 37,642-647.
|
|
Matsui,T.,H.Sato,S. Hamada and C. Shimizu(1982):Comparison of toxicity of the cultured and wild puffer fish Fugu niphodles.Japan. Soc.Sci. Fish.,48(2),253
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≪ふぐ毒の食物連鎖≫・・・ご質問にお答えして |
フグ毒は、フグの餌となるプランクトンもしくはそれに含まれる細菌類が起源であるという話を 聞いたことがありますが、このホームページでは未解明となっています。どうなのでしょう。
昨年の西日本ふぐ研究会の発表では、一概にそうはいえないということです。一時、水槽で育てたふぐには毒がないと報道されたことがありますが、個体差はありますがテトロドトキシンは検出されたそうです。人体に害を及ぼさない程度なので、無毒ということで発表されたようですが、「無毒」というのではなくて「無害」というのではないかということでした。食物連鎖によるだろうことも事実ということですが、それだけではないということなのです。ふぐ毒産生腸内細菌のこともありますし、まだまだきちんとした解明はされていないと思います。もう少し詳しい資料もあります。 |
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≪ふぐ中毒・迷信あれこれ≫北浜喜一著:「ふぐの博物誌」より |
ふぐにまつわる迷信はたくさんあります。その代表的なものから載せていきます。 |
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※食べ合わせについて
ふぐと青菜、ふぐと飴、ふぐと梅干、ふぐとウナギ、ふぐと小豆、ふぐと赤飯、ふぐと牛肉、ふぐと天ぷら、ふぐと饅頭、ふぐと豚肉、ふぐと砂糖、ふぐと汁粉、ふぐと油揚げ・・・
現在では信じられてはおりませんが、昔は中毒どころではなく命取りにもなりかねないと伝えられていたそうです。どれを食べても全く中毒の心配はありません。 |
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※俗信中毒療法
フグ中毒の民間療法のうち最も有名なのに「土に埋めること」というのがあります。中毒症状を起こしますと血圧の低下が起こることから抹消部分を圧迫させて血圧の降下を防ごうとしたものだと思われます。また、体を冷却する目的でもあったようです。しかし、効果はありません。 |
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※解毒について
効果ありませんからマネしないでくださいね
1) 桜の木の皮を煎じてのむ
2 )豆和(ツワ)の葉の搾り汁をのむ
3 )紺屋の染物藍をのむ
4 )鉄炮(てっぽう)の薬を白湯でのむ
5 )南天の葉の搾り知るを茶わん一杯のむ
6 )蘆(あし)の根を煎じてのむ
7 )茄子のヘタを食べる
8)アオントドの嘴・爪・翼・超を取り去ってから、黒焼きにし、粉にして白湯でのむ
9 )一角犀の角をのむ
10) 茗荷の根の汁をのむ
11)小銭を口にふくませ知るをのみ込む
12)梅干しの汁をのむ
13)橙の知るをのむ
14)牛角をおばこを煎じてのむ
15)ざくろの皮を煎じてのむ |
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※嘔吐について
マネしないでくださいね
1)人糞をもって毒を嘔吐させた後、甘草、黒豆を煎じてのませる
2)樟脳を粉にして湯でのませる
3)スルメを焼いて煙をかがせる
4)烏賊魚の墨をのませる
5)鶏冠の血をのませる
6)ごまの油と白礬
7)つばめの糞をのませる
8)西洋ローソクをのませる
9)砥石の粉をのませる
10)鰯の黒焼きの墨をのませる |
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今日では、ふぐ中毒は、良心的な医者の手当を早く受ければ、90%まで助かるので、安心して相談すればいいと思います。
くれぐれも素人料理・素人療法はやめましょう。 |
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◆なぜ「てっさ」「てっちり」と呼ぶの?
ふぐのことを「てっぽう・鉄炮」と呼び、テッポウの刺身・てっぽうのチリを省略したものです。 ふぐ食が禁止されているにもかかわらず、「テッポウ」の隠語を使い流通していました。「鉄炮」とは、「あたれば命がない」という説と、「滅多にあたらない」という説とあります。いずれにしても「ふぐ毒にあたる」ということにかけたものと思われます。
大阪では禁令があったにもかかわらず隠語「てつ」と呼ばれておりました。「てつの刺し」「てつのちり」の略であったかもしれません。 |
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◆ひれ酒・身酒がおいしいのはどうして?
「ひれ酒」の美味しさは、日本酒に含まれる「コハク酸」とヒレに含まれる「イノシン酸(カツオブシに含まれる旨味と同じ)」という旨味成分が旨く調合しあって生まれる美味しさです。「身酒」も同じ理由からです。
まず純粋に「ひれ酒」の旨さを引き出すためにはヒレに雑味があってはいけません。 ヒレを丁寧に洗い、ぬめりを完全に取り除かなければあの魚独特の臭みが出てしまいます。 魚臭いヒレ酒は手抜きのヒレを使ったせいです。綺麗なヒレを使ったものは、焼いた香ばしさと旨味だけです。 ただ、一般にはあの魚臭さがなければ「ヒレ酒」と思わない人が多く、物足りないと思う方もいらっしゃるようです。
ついでに料理したものの美味しさは「旨味成分」が大きく関係します。食物の素材の美味しさを引き立たせるのです。
<代表的な旨味成分> |
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カツオブシ・煮干し(イリコ) |
・・・イノシン酸 |
昆布 |
・・・グルタミン酸 |
昆布のヌメヌメ |
・・・アルギン酸 |
椎茸 |
・・・グアニール酸 |
貝類/お酒 |
・・・コハク酸 |
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※「美味しいヒレ酒の入れ方」
「ふぐヒレ」をこんがりキツネ色に焼き、コップに入れて熱燗(ぬるいとダメです)を注ぐ。蓋をしてコハク色になるまでチョット待つ。
※「身酒の入れ方」
刺身にちょっと塩をする。 コレに熱燗を注ぐ。 |
<多数寄せられているご質問>家庭でうまく作る方法はないでしょうか。
(お答え) 簡単に出来ますよ。ヒレをきつね色に焼いて、(その時こがさないよーに)熱々、熱燗を注ぎ蓋をします。ちょっとしますとお酒が琥珀色になります。そしたらOK!
蓋を開けたときにボッと火を付けてアルコールを飛ばすかどーかはお好みです。「ヒレ酒」が美味しいかどうかというのは、入れ方もさることながら、「ヒレ」の質と、焼き方にあるように思います。 |
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◆終わりに・・・
ふぐ食の歴史はふぐ食禁止令の歴史ともいえます。中毒に関するデマが飛んだり、それを揶揄するものがいたり、絶賛するものがいたり、しかし、「ふぐ」はその美味しさゆえに(強精作用もあるといわれております)中毒さえもものともせず通人に愛好され続けてきたのです。(現在では有資格者の調理人が処理をしますのでそのような心配はありません)
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◆俳句にみるふぐ
季語/冬
古名/ふくと・ふぐと
逢はぬ恋思切夜やふぐと汁(あはぬこい おもいきるよやふぐとじる) 蕪村
ふぐと汁ひとり喰ふに是非はなし(ふぐとじる ひとりくらうにぜひはなし) 白雄
ふく汁や鯛もあるのに無分別(ふぐじるや たいもあるのにむふんべつ) 芭蕉
あら何ともなやきのふは過ぎてふくと汁(あらなんともなやきのふはすぎて ふくとじる) 芭蕉
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蕪村や白雄は寒い夜を、ふぐ汁を食べながら一人温まってる様子、しかし芭蕉は、ふぐふぐとそんなに騒ぐほどではないじゃないか、他にも食べる物はあるだろうにと、思いつつ・・・ |
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◆参考文献
※ふぐ百話
※ふぐの博物館
※食べ物雑学
※おもしろいサカナの雑学辞典
※日本近海フグ類
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